この記事は、ニフクラブログで2022-07-25に公開された記事を移転したものです。
こんにちは、CRE部 技術支援チームです。
仮想マシンに複数のNIC(Network Interface Card)を設定してそれぞれ異なるネットワークに割り当てるのは、システム構成としてはよくあることだと思います。
しかし、こういった「よくある構成」であっても、バックアップ / リストアを行うためには、少々手間がかかるケースも多いはずです。 具体的には、IPアドレスが以前と異なる値でNICに復元されたり、IPアドレス自体が復元されない事も考えられます。 そうなると、IPアドレスの再設定作業が必要となり、復旧までの時間が余計にかかってしまうだけでなくミスも起きやすくなるので困ってしまいますよね。
このような構成でも、バックアップ / リストアのソリューションサービス、バックアップ/セキュリティサービス(Acronis Cyber Protect Cloud) 〈※以下:Acronis〉を利用いただくことで、IPアドレスなど従来のネットワーク環境を維持した状態でバックアップを取得することが可能です。
今回は、実際にニフクラの仮想サーバー(Windows Server)に追加NICを付与した状態で、Acronisを使用してバックアップ / リストアを行ったらどうなるのか(そのままの構成が再現できるか)を検証してみました!
構成イメージ
前提条件
本ブログは、以下の前提知識がある方を想定しています。
- ニフクラの基本的なコントロールパネルの操作、サービスを利用に関する知識
- Windows Serverの基本的な操作、設定に関する知識
想定シーン
本検証は、以下のシーンを想定しています
- 通常時、追加NIC付きの仮想サーバー(Windows Server)のバックアップを、Acronisで行っている
- 保存先はAcronis Cloudを利用している
- 追加NIC付きの仮想サーバー(Windows Server)に障害が起き、サーバーが停止した
- 復旧作業として、Acronis Cloudのバックアップストレージから仮想サーバーのリストアを行う
構成詳細
検証条件
項目 | 内容 |
---|---|
利用ゾーン | east-13 |
プライベートLAN | あり(2本) |
ルーター | router.small×1(SNAT用) |
サーバータイプ | c-medium8×2 (バックアップ用サーバー、リストア用サーバーで1台ずつ) |
OS | Microsoft Windows Server 2022 Datacenter Edition |
追加NIC | あり (バックアップ用サーバー、リストア用サーバーで合計2個) |
バックアップサービス | バックアップ/セキュリティサービス(Acronis Cyber Protect Cloud) |
その他設定情報
項目 | 内容 |
---|---|
ホスト名 | win2022dc01(バックアップ元) win2022dc02(リストア先) |
PLAN1 ネットワークアドレス |
192.168.1.0/24 |
PLAN2 ネットワークアドレス |
192.168.2.0/24 |
win2022dc01 IPアドレス |
192.168.1.11/24(PLAN1) 192.168.2.10/24(PLAN2 ※追加NIC) |
win2022dc02 IPアドレス |
192.168.1.30/24(PLAN1) 192.168.2.49/24(PLAN2 ※追加NIC) |
デフォルトゲートウェイ ※ゲートウェイルータのPLAN1上アドレス |
192.168.1.31 |
検証環境
検証方法について
以下の手順で検証を行います。
- プライベートLANの作成
- IPアドレスなしの状態で仮想サーバーを2台作成
(ホスト名:win2022dc01、win2022dc02) - IPアドレスなしの状態で追加NICを作成し、win2022dc01とwin2022dc02それぞれに付与
- OS上から、各NICにStaticでプライベートIPアドレスを割り当てる
- win2022dc01、win2022dc02両方のipconfigを取得する(データリカバリ成功を確認するため)
- Acronisエージェントをwin2022dc01にインストール
- Acronisのコンソールより「マシン全体」でwin2022dc01のバックアップを行う
- ブータブルメディアを利用し、win2022dc02へリストアを行う
- win2022dc02のipconfigを再取得し、リストア前と比較して、どのような結果になっているのかを確認する
※リストア後にwin2022dc01のIPアドレスが引き継がれていた場合、リストア成功とする
検証の実施
1. プライベートLANの作成
こちらのドキュメントを参考に作成します。
今回はPVLAN1,2の二つを作成します。
2. サーバの作成
こちらのドキュメントを参考に作成します。
今回は「Microsoft Windows Server 2022 Datacenter Edition」で作成し、プライベート側のNICを「PVLAN1」に接続しておきます。
3. 追加NICの作成
こちらのドキュメントを参考に作成します。
接続先は、PLAN2 とします。
その後、こちらのドキュメントを参考に、各サーバに付与します。
4. IPの付与
OS上から、各NICへIPを付与します。
一般的な作業のため、手順については省略します。
5. バックアップ前のipconfigの確認
- win2022dc01
※NICの表示の順番がEthernet1→Ethernet0の順番になっていますが、本検証に影響はありません。
- win2022dc02
6. Acronisのインストール
Acronis社のドキュメント (※リンク先は他社のサイトとなります) を参考に、エージェントを導入します。
7. バックアップ取得
Acronisのコンソール画面から「マシン全体」でwin2022dc01のバックアップを取得します。
8. リストア
バックアップ元である win2022dc01を停止させた後、win2022dc02にAcronisのブータブルメディアをマウントしリストアを行います。
なお、注意点として、 サーバーのIPアドレスをStaticで振った場合ブータブルメディア側でも手動で設定が必要となるため、「ネットワーク設定」でリストア先であるwin2022dc02のIPアドレス・デフォルトゲートウェイ・DNSサーバーの情報を入力してください。
9. 確認
リカバリ先の「win2022dc02」のコンソールからログインし、ipconfigを取得します。
結果
win2022dc02のコンソールを起動すると、ロック画面に「win2022dc01」と表示されていることが確認できます。
バックアップ元のネットワーク設定がどのようにリストアが行われているかを確認するため、リストアを行ったwin2022dc02(中身はwin2022dc01)とリストア前のwin2022dc01のNICの情報を確認してみます。
リストアを行ったwin2022dc02(中身はwin2022dc01)と、バックアップ実施前のwin2022dc01のipconfigの比較
もともとのNICの紐付けのまま、IPアドレスが復元されていることが確認できました。
以上の結果から、IPアドレスの順番が入れ替わることなく復元が実施できることが確認できました。
まとめ
今回は追加NICがついているサーバについて、Acronisによるバックアップ/リカバリが与えるネットワーク観点での影響を確認しました。
結果、追加NICのある仮想サーバー(Windows)のバックアップ/リストアをAcronisで行っても、IPアドレスの入れ替えが発生しないことが確認できました。
これにより、復元作業後にIPアドレスの付与し直しなどの作業を行わずにサーバの利用を開始することができますので、復元後の作業内容を簡単にすることが期待できますね。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
注意事項
- 今回は利用していませんが、グローバルネットワークに接続されているNICのIPを固定する場合は、付替IPサービス、マルチIPサービスの利用をご検討ください。
- 本記事で記載した各サービス/ニフクラの機能等は、2022年6月時点の情報です。ご利用の際は、各サービスの最新情報をご確認ください。
- 本記事については検証結果の一つとなります。実際に構成を検討されるときは、それぞれの要件を鑑みて十分に検証を実施してください。
- 本記事ではOS上の操作についても記載していますが、ニフクラではOS以上はご利用者様の責任範囲となりますのでご留意ください。