クラウドサービスを利用していると「レイテンシーが高い」「レイテンシーが低い」といった表現を聞くことがあると思います。
この記事では、レイテンシーとは何か?レイテンシーの発生原因、改善方法までを分かりやすく解説します。
◆レイテンシーとは何か?
レイテンシーとは、データ転送における指標のひとつで、転送要求を出してから実際にデータが送られてくるまでに生じる通信の遅延時間のことを指します。
レイテンシーは一般的にミリ秒(ms)単位で測定され、値が小さいほど「低レイテンシー」、大きいほど「高レイテンシー」と表現します。
1. ユーザー体験への影響
低レイテンシーは、スムーズで快適なユーザー体験を提供するために不可欠です。
たとえば、下記のような場面で高レイテンシーな状態だと著しくユーザー体験が悪化します。
- Webサイトの表示速度
- オンラインゲームのレスポンス
- ビデオ会議の音声・映像の遅延
ユーザー体験が悪化した結果として、サービスが利用されなくなる可能性もあります。
2. ビジネスへの影響
高レイテンシーはユーザー体験のみならず、ビジネスにも大きな影響を与えます。
前述のようにサービス利用の離脱を招く可能性もありますし、ある大手Eコマースサイトでは、ページの表示が0.1秒遅れるごとに売上が1%減少するという調査結果を公表しています。
また、企業内システムの遅延が従業員の生産性低下につながることは、多くの人が体験している共通認識ではないかと思います。
◆レイテンシーが高くなる原因とは?
レイテンシーが高くなる主な原因には以下のようなものがあります
物理的距離: データセンターとユーザーの距離が遠い
ネットワーク帯域:ネットワーク帯域に対しトラフィック量が過大
システムの性能:サーバーなどハードウェアやネットワーク機器の処理能力不足
システムの設計:アプリケーションやデータベース設計の最適化不足
◆レイテンシーの改善方法
レイテンシーの改善は、レイテンシーが高くなる原因を解消するアプローチが基本になります。
1. ネットワークの最適化
ネットワーク帯域幅の拡大や経路の最適化により、データ転送の効率を上げる
2. システム性能の向上
高性能なサーバーやネットワーク機器を導入することで、処理速度を向上する
3. アプリケーションの最適化
データベースのインデックス設計やキャッシュの活用などソフトウェア側の改善を実施する
4. エッジコンピューティングの活用
データセンターとの物理的な距離を短縮するのは、比較的コストがかかる難易度が高い対策と言えます。 エッジコンピューティングのように、ユーザーに近い場所で処理を行うことで中央のデータセンターとの通信によるレイテンシーを削減するアプローチがあります。 近年、大規模なWebサービスで活用されているCDN (Content Delivery Network) の利用もエッジコンピューティングの考え方に基づいたものといえます。
◆クラウドならではのレイテンシーの課題を解決するには?
クラウドサービスを利用する上で、クラウドならではのレイテンシーの課題がいくつか存在します。 代表的な例を3つ挙げてみました。
1. リソース間の物理的な距離
データセンターとユーザーの距離が遠いケースは前述の通りですが、クラウド上で利用しているリソース間の距離(例:APサーバーやDBサーバー)に起因するネットワークの遅延も考慮する必要があります。クラウドサービスによっては、利用可能なリソースのリージョン・ゾーンが限定されている場合があるため、出来るだけ近くに配置されるような考慮が必要です。
また、DBサーバーやストレージなどのリソースを分けてマルチクラウド構成で利用するケースや、同一クラウド内であっても、異なるリージョンにまたがってリソースを配置するとレイテンシーが高くなる可能性があります。対策としては、専用線やVPNでダイレクトに接続するサービスを利用する方法がありますが、比較的高額になります。
2. ネットワークの品質
クラウドサービスは基本的にはインターネットを経由してクラウド事業者のデータセンターに接続しますので、インターネット回線の帯域不足によってレイテンシーが発生する可能性があります。社内ネットワーク内でも、ネットワーク帯域やVPNなどボトルネックとなりうる箇所が存在するとレイテンシーが発生しやすくなります。
3. 共有リソースの高負荷
他のユーザーとリソースを共有するパブリッククラウドサービスならば潜在的に存在するリスクの一つですが、他のユーザーのリソースの利用状況によって負荷が高まりレイテンシーが発生することがあります。対策としては、よりハイスペックなリソースを選択する・自社で占有利用出来るサーバーを選択するなどが考えられます。
◆まとめ
レイテンシーの管理と最適化は、クラウドサービスを活用していく上で非常に重要な要素です。
高レイテンシーの状態が続くと、Webサイトやサービス、アプリケーションのパフォーマンスが低下して、結果的にユーザーの体験が悪化してビジネスへの悪影響(ユーザーの離脱・生産性の低下)が生じる可能性があります。
新しいシステムを構築する場合はもちろん、既存のシステムを改修する際も、レイテンシーの管理と最適化には十分な注意を払う必要があります。