近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みの一つとして、「ノーコード・ローコード開発」を活用したシステム構築・業務改善が注目を集めています。
本記事では、ソースコードを書かない(プログラミング言語を使わない)、もしくは少ないソースコード(最低限のプログラミング言語だけ)でシステム構築を行えるノーコード・ローコード開発の概要や特徴、メリット、活用事例などについて詳しく解説します。
◆ノーコード・ローコード開発とは?
前述の通り、ノーコード開発とローコード開発は、ソースコードを書かない(プログラミング言語を使わない)、もしくは少ないソースコード(最低限のプログラミング言語だけ)でシステム構築を行う開発手法を指します。それぞれ異なる目的で利用される開発手法ですが、メリット・デメリットは程度の差はありますが概ね同じような内容です。
ノーコード開発とは?
プログラミング言語の知識を持たない人が、コードを一切記述せずにシステム開発を行えることを目的とした開発手法です。
ローコード開発とは?
最低限のプログラミング言語の知識がある人が、高度なプログラミング言語を使用せずにコーディングにかかる工数を自動化などで抑制して迅速に開発を行うことを目的とした開発手法です。
メリット
- 高度なプログラミング言語の知識が不要
- 開発期間の短縮が見込める
- コスト削減が見込める
デメリット
- システム開発の柔軟性が低い
- システム開発の拡張性が低い
いわゆる基幹システムのような大規模かつ複雑なシステム開発には向いていませんが、日常的な繰り返し作業を自動化するような小規模な業務効率化のためのアプリケーション開発に向いているといえます。
◆ノーコード・ローコード開発が注目されている理由
ノーコード・ローコード開発が注目を集めている背景には、前述した日本におけるDXの取り組みの拡大と強い関連性があります。
1.IT人材不足
経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」によると、少子高齢化によって2025年にはIT人材が約43万人不足し、2030年には59万人ものIT人材不足が生じる可能性も指摘されています。2024年現在、高度なスキルを持つIT人材(プログラマーなどのITエンジニア)の採用・獲得は難易度が高くなっています。そこで、プログラミング言語の知識を持たない既存の人材でもシステム開発の内製化が可能になるノーコード・ローコード開発が注目を集めています。
2.DXによる業務効率向上の取り組み拡大
コロナ禍を経てあらゆる業務・手続きをデジタル化する流れが拡大したのは周知の通りです。 IPA(情報処理推進機構)の「デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書(2022年度)」によると、DX取組状況として「業務の効率化による生産性の向上」という項目で成果が出ている企業が7割以上を超えているというデータがあります。
DX本来の目的はこの調査のアンケート項目にもある「現在のビジネスモデルの根本的な変革」と考えられますが、まずは現場の業務や手続きをITで効率化して生産性向上を図っていこうという身近なDXの取り組みが年々拡大しているという状況だといえるでしょう。
そういったニーズにこたえる形で、短期間で現場の業務効率を上げるための比較的小規模なアプリケーションの開発が可能な、ノーコード・ローコード開発のプラットフォーム・サービスの市場が活性化しています。
こちらの記事もご覧ください。
コードを書かずにシステム開発【第五回】AI-OCRの業務利用の壁を壊すローコード開発 - Fujitsu Cloud Direct ブログ
◆ノーコード・ローコード開発の活用事例
ローコード/ノーコード開発は様々な分野で活用されています。 総務省が公開している「自治体DX推進参考事例集」からいくつか抜粋してご紹介します。
1.福島県昭和村様
ノーコード・ローコードツールを導入して、まずは「DX推進チーム」がスモールスタートで庁内の業務効率化を目的とした超過勤務命令表・郵便料金の差出票などのアプリケーションを内製化しています。その効果を確認した上で全庁展開を図り、全庁的な電子決裁も実現しただけでなく新型コロナウイルスのワクチン接種受付アプリを内製で開発して住民サービスの向上を実現しています。
2.大分県別府市様
新型コロナ感染症対策をきっかけに、業務自動化・効率化を推進する目的でノーコード・ローコードツールを導入しました。プレミアム付き商品券の予約販売システムを内製で作成し、Webから24時間予約を実現。避難所運営支援システムを電子化し、従来本部職員が電話で行っていた避難所の避難者数の集計を自動化したことで作業時間の縮減を図っています。
これらの事例では、スモールスタートでノーコード・ローコードツールを導入して、徐々に全体に拡大していくという方法で、自治体のプログラミング言語の専門的な知識を持たない一般の職員が内製による開発を行い、コスト削減や業務効率化を実現しています。
まとめ
ノーコード・ローコード開発は、多くの企業や組織でシステム開発の敷居を大きく下げ、業務効率化やDXを推進する上で重要なツールとなっています。
事例でもわかるように、まずはスモールスタートで、身近な業務効率化・自動化による実績を作ってから全体に横展開をすることがノーコード・ローコード開発の内製化を成功させるポイントです。