お疲れ様です。プライム・ストラテジーの渡部です。
今日は、サーバー選びの際の一大決断、OS選びにフォーカスを当てます。
FJcloud-V(ニフクラ)で利用できるLinux系OS
FJcloud-V(ニフクラ)でサーバーを立ち上げようとした場合、最初に悩むのはサーバースペックより「どのOSにしたら良いか」かと思います。現在、利用できるOS(スタンダードイメージ)は以下のものがあります。
クラウドユーザーガイド(コンピューティング:OSイメージ:Linux) | ニフクラ
実は、これらOSには親子関係があります。
まず、世界的にエンタープライズ環境で利用されているOSとしてRed Hat Enterprise Linux(以下、RHEL)があります。Linux上で動く各種アプリケーションもこのRHELを動作OSとして前提としているものが多くあります。しかし、RHELは有償であり、OSに費用をかけれない場合はRHEL以外の無償のOSを利用する必要があります。
その場合選択肢となるのが、RHELのクローンOSであるCentOS / Rocky Linux / AlmaLinuxです。
※今回はUbuntuの話は除外して説明させていただきます。
2大RHELクローンOSの誕生
今までRHELの無償版といえばCentOSでした。CentOSは初版が2004年5月14日にリリースされ、約19年間に渡ってRHELのクローンとして安心して利用できる無償LinuxOSとしての地位を確立してきました。
CentOSをリリースしてきたCentOSプロジェクトはRHELの開発元のRedHat社から資金提供も受けており、この関係は長く続くものと考えられてきました。
エンタープライズ環境においても、保守契約が必要な本番環境はRHELを利用し、開発環境については無償のCentOSを利用するなどの棲み分けも進みました。
しかし、激震が起きます。
2020年12月8日にCentOSプロジェクトは、RHELクローンではないOSに(CentOS Stream)にフォーカスを変更し、CentOS Linux 8のサポートを2021年末で終了すること、以降のクローンOSの提供をしないこととしました。
ここからポストCentOSを巡った戦いがスタートします。
まず、声を上げたのはAlmaLinuxです。
AlmaLinuxはCloudLinux社によって開発されたRHELのクローンOSであり、最初の安定版は2021年3月30日に公開されました。
その後、開発はCloudLinux社から出資を受けたThe AlmaLinux OS Foundationが主体となり、リリースを続けています。
次に声を上げたのはRocky Linuxです。
Rocky Linuxとは、CentOSプロジェクトの創設者であるGregory Kurtzer氏が中心となって開発されたLinuxディストリビューションです。CentOS 8のサポート終了を受ける形で、2021年12月にRocky Linuxの開発プロジェクトが開始され、2021年4月30日に公開されました。
短期間に2つのRHELクローンのプロジェクトが開始され、ここからどちらのOSをサポートするのが良いか各レンタルサーバー事業者やIaaS事業者での探り合いが開始されます。
まず、最大手のさくらインターネット社は自社が展開する「さくらのVPS」にて2022/6/28にAlmaLinuxの提供を開始、その約1ヶ月後の2022/8/2にRocky Linuxの提供を開始します。
逆に、Xserver社は2022/9/8に「Xserver VPS」の発表と共に、Rocky Linuxの提供を開始し、その後約1.5ヶ月後の2022/10/24にAlmaLinuxの提供を開始しました。
正直これからどちらが主流になっていくのか分からないので「両方提供しよう」というのが各レンタルサーバー事業者の考えであり、この流れは今も続いています。
国内シェアの動向
しかし、AlmaLinux/Rocky Linux両OSの提供がスタートしてから1年半が経過し、日本国内においては一定の方向性が見えてきました。
(画像引用:『今後利用したいLinuxOSについてアンケート調査』を実施 2022年と比較しRocky Linuxが激減 AlmaLinuxも減少するも25%程度を占める|株式会社デージーネットのプレスリリース)
今後利用したいOSとして、AlmaLinuxが26%なのに対して、Rocky Linuxは3%となりました。今後は残り検討中の26%をどの陣営が獲得していくか次第ですが、AlmaLinuxは今後も高いシェアを維持していくと思われます。
GoogleトレンドでAlmaLinuxとRocky Linuxを比較すると、1.25倍AlmaLinuxの方が多いという状況になってきています。
AlmaLinux勝利!
グローバルシェアの動向
AlmaLinux勝利かと思うかもしれませんが、グローバルで見ると逆になっています。
Rocky Linuxの創立スポンサーであるCIQのサイトには、RHEL及びクローンOSの動向が示されており、Rocky Linuxが一番シェアを獲得しています。
画像引用(About CIQ - CIQ)
スポンサーのサイトなので、意図的に自分(Rocky Linux)に都合の良い数字を出しているかと考えてしまいますが、先ほどと同じくGoogleトレンドで範囲をグローバルで設定すると、今度は日本限定と違いRocky Linuxに関する検索が多いことが示されます。
いわゆる日本とグローバルで潮流が違う状況が生まれています。
うわ、混沌としとる。
結局今選ぶOSとしてはどちらか
正直、ここからは各エンジニアによって考え方が違うので一つの意見として捉えていただければと思います。
各レンタルサーバー事業者などIaaS事業者は引き続き両方のOSをサポートしていくと考えられます。
そのため、私自身はグローバルシェアよりは、パッチリリースにおける迅速性と脆弱性管理に対する取り組みを評価し、AlmaLinuxを推薦しています。
パッチリリース速度
AlmaLinuxとRocky Linuxは共にRHELのクローンOSであるため、RHELのバージョンアップが行われた後に同じレベルのバージョンアップが実施されます。
問題はその間の期間であり、過去の実績からAlmaLinuxの方が遅延少なく提供しています。
(画像引用:ゼロから分かる AlmaLinux|BLOG| サイバートラスト)
脆弱性管理
AlmaLinux は、SBOM(Software Bill of Materials)というソフトウェアの構成管理、脆弱性管理に活用することでソフトウェアサプライチェーンの安全性を高めるための仕組みに対応しています。
エンジニアならOSに興味を持とう
OSは実はRHEL/CentOS/AlmaLinux/Rocky Linuxといった今回取り上げたものだけではなく数多くのOSがあります。
DistroWatch(ディストロウォッチ)https://distrowatch.com/
という、各種Linux系OSやOpenSolarisやBSDといった他のOSの情報を網羅的に提供するウェブサイトがあります。
数百のディストリビューションを網羅しており、各OSのページを見ると、そのOSがどんな目的で作成されているのか理解することができます。
OSの世界(+カーネルの世界)面白いですので、当社のKUSANAGIを含め少しでも興味があればいろんなOSを触ってみることをお勧め致します。
余談ではありますが、個人的に好きなOSを上げると、今はもう開発終了してしまいしたが「BeOS」です。大学時代にその可能性・先鋭的な取り組みから興奮してBeの探求をしていました。ああ、懐かしい。