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中小企業のエンジニアこそ知っておくべき「BCP(事業継続計画)」の基礎知識

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こんにちは、富士通クラウドダイレクトのMです。

先日、「クラウド移行のその前に!知っておきたい『責任分界点』と『可用性』の関係」の記事でもお話しましたが、ここ数年、地震や豪雨などの自然災害、新型コロナウイルスをはじめとするパンデミックなど、業務に大きな影響を与える出来事が頻発しています。

最近も千葉県の東方沖で地震が相次いでおり、心配は尽きません。千葉県民の私は先週、防災グッズを買いに100均をハシゴしました。

首都直下地震や南海トラフ地震などの発生も懸念される一方で、こうした「不測の事態」に備えることの重要性は、企業規模を問わず高まっています。特に、業務を推進する上で必要不可欠ともいえるITシステムは、停止による影響が大きいため、より一層の対策が必要です。

災害以外にも、サイバー攻撃の増加など、システムを取り巻く状況が厳しさを増す一方で、対策に頭を悩ませている中小企業のエンジニアの方や、情報システム部門の方も多いのではないでしょうか。

そんな中、改めて注目されているのが「BCP(事業継続計画)」です。今回はこのBCPについて、概要から必要とされる理由など、基礎から改めて解説します。

BCPとは

BCP(事業継続計画)

BCPとは、「Business Continuity Plan(事業継続計画)」の略で、自然災害やテロ、パンデミックなどの緊急事態が発生した際に被害を最小限にし、事業の継続や早期の復旧を図るための計画のことをいいます。日本では東日本大震災を機にその重要性が再認識されました。

災害だけでなく、事故や火災など何かしらの問題で事業が停止することがあります。停止が長期化すればするほど企業の信頼は損なわれ、顧客の流出やシェア率の低下など、ダメージは大きくなります。ひいては廃業につながる可能性もあるでしょう。その場合、自社の従業員はもちろん、自社の製品・サービスを利用している顧客や取引先にも影響を与えることになり、社会の動きを止めることにもつながるかもしれません。

このことから、有事の際も事業を継続し、停止した場合も速やかに復旧するため、BCPの策定が求められています。最近では、事業停止に伴う顧客への影響度が大きい「介護サービス事業」に対し、2024年4月以降、BCPの策定を義務付けるといった内容が、厚生労働省の「令和3年度介護報酬改定」で示されました。このように、BCPの策定は必要不可欠という認識が広がっています。

「BCM」や「DR」との違い

ちなみに、BCPと共によく用いられる言葉として、「BCM(Business Continuity Management)」「DR(Disaster Recovery)」があります。BCMは「事業継続マネジメント」という意味で、BCPを策定・運用し、その結果をもとに見直しを進めるといった、事業継続に向けたマネジメント全般のことをいいます。BCPはBCMの一環としての位置づけ、というイメージです。

一方、DRは「災害復旧」を意味し、災害などによりITシステムが被害に遭った場合に、迅速に復旧するための機能や体制を整えることをいいます。DRについては、ITシステムに関する対策を指す場合に用いられるのがポイントです。なお、それぞれの関係を図にすると、以下のようなイメージになります。

BCM・BCP・DRの関係イメージ図

BCM・BCP・DRの関係イメージ図(内閣府「事業継続ガイドライン第三版 -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応- 解説書」をもとに作成)

中小企業も策定する必要がある?

大企業などを中心にBCPの策定が進む一方で、中小企業ではまだまだ進んでいないのが現状です。実際、東京商工会議所の「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート2023年調査結果」によると、大企業のうち71.4%が「BCP策定済」と回答しているのに対し、中小企業では27.6%であったことが明らかにされています。

BCPの策定状況

BCPの策定状況(東京商工会議所「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート2023年調査結果」をもとに作成)

しかし、中小企業こそBCPの策定が必要です。中小企業は大企業と比較して、人員・設備・資金といった経営資源が限られています。そのため、ひとたび災害などの被害に遭えば、リソース不足で復旧が長期化する可能性が高く、事業の縮小や廃業に追い込まれてしまうことも少なくありません。

実際、東日本大震災では、地震や津波などにより多くの中小企業が事業所や工場の倒壊、機材や什器の流失などの被害に遭い、事業の停止や廃業を余儀なくされました。一方で、内閣府の「業務継続に係る地方公共団体等の対策準備事例」では、BCPを事前に策定していたことにより、事業の迅速な再開ができた企業の事例がいくつか紹介されています。

このように、BCPの策定の有無は、その後の経営を大きく左右することにもつながります。BCPの策定は企業規模や業種を問わず重要ですが、経営資源が潤沢でない中小企業こそ、策定が必要といえるでしょう。

国や自治体、公益団体などの補助金・助成金も活用しよう

とはいえ、BCPにまわせるコストなんてない!と感じている方もいるかもしれません。実際、東京商工会議所の調査でも、「策定・検討に係る費用に余裕がない」がBCP対策の課題として上位に挙げられています。そのような場合は、国や各自治体などが提供している補助金や助成金などを活用するのも選択肢の一つです。

例えば、公益財団法人東京都中小企業振興公社による「BCP実践促進助成金」が挙げられます。この制度を利用することで、BCPを実践するために必要な設備・物品の購入、設置にかかる費用(緊急時用の自家発電装置やクラウドサービスによるデータのバックアップ費用など)について、1500万円を上限に補助を受けることが可能です。

また、東京都江戸川区の「事業継続計画(BCP)の策定にかかる助成金」や、大阪府和泉市の「和泉市中小企業BCP策定支援事業補助金」、新潟県長岡市の「BCP・事業承継・経営改善補助金」など、さまざまな自治体が支援制度を設けています。なお、金額や支給条件、申請方法などの詳細については、各補助金・助成金のサイトなどを確認してください。

「事業継続力強化計画認定制度」の利用もおすすめ

ほかにも、中小企業向けの支援として「事業継続力強化計画認定制度」があります。この制度は、中小企業が策定した「防災」や「減災」に関する事前対策の計画を、経済産業大臣が「事業継続力強化計画」として認定するものです。

事業継続強力化計画パンフレット

事業継続強力化計画パンフレット

認定されると、防災・減災設備の導入に対する税制優遇や、信用保険の保証枠の別枠追加などの金融支援「ものづくり補助金」などの補助金採択における加点など、さまざまな支援を受けることができます。ちなみに、先ほど紹介した「BCP実践促進助成金」のように、事業継続力強化計画の認定を受けていることが補助金の支給条件になっている場合もあります。

また、事業継続力強化計画は中小企業のための「簡易版BCP」ともいわれており、BCPの基本的かつ重要な項目に特化する形で構成されています。そのため、まだBCPを策定していない場合は、まずは最初の一歩として事業継続力強化計画を策定し認定を受け、次なるステップとしてより詳細なBCPを策定する、といった流れで取り組んでみるのも良いかもしれません。

まとめ

今回は、今や必要不可欠ともいえる「BCP」について、その概要から中小企業こそ必要な理由、策定の際に利用できる補助金まで、詳しく解説しました。

ここまで読んでみて、「じゃあ、BCPって何をどう策定すればいいの?」「システムに有効な対策って、例えばどんなものがある?」などと感じた方も多いかと思います。こちらについてはまた別の記事で解説予定ですので、お楽しみに!