こんにちは。日本仮想化技術株式会社の水野です。
普段はクラウドを利用したDevOps案件に携わっている、Ops寄りのエンジニアです。
現在、サーバーOSの定番といえば、なんと言ってもLinuxでしょう。
ですが厳密に言えば、LinuxとはOSのコアである「カーネル」のみを指す名称です。カーネルだけではOSとして使うことはできません。
そのため「OSにLinuxを使う」と言った場合、実際にはLinuxカーネルをベースとした、何らかの「ディストリビューション」をインストールして利用するのが一般的です。
ディストリビューションにはそれぞれ特徴があり、ツールの使用方法も異なります。よって、サーバーを運用していくためには、そのディストリビューション特有の「お作法」を知ることが不可欠です。もともと日本では、老舗の商用ディストリビューションであるRHELと、そのクローンである(Streamになる前の)CentOSが非常に強い存在感を持っていました。ですが最近では、世界的に人気のある「Ubuntu(ウブントゥ)」に興味を持っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回から数回に分けて、Ubuntuの特徴や上手な使い方を紹介していこうと思います。
Ubuntuとは
Debian GNU/Linuxという、非常に歴史のあるディストリビューションがあります。 このDebianの開発者でもあったMark Shuttleworth(マーク・シャトルワース)氏が中心となって、Debianから派生する形で開発されたのがUbuntuです。 Ubuntuは、誰にでも使いやすいLinuxベースのOSを無償で提供することを目標に開発されており、現在ではデスクトップ、サーバー、クラウド、コンテナからIoTまで、非常に幅広い用途で利用されています。
最近では特にクラウドやコンテナ分野で人気があり、世界中にあるLinuxのWebサーバーのうち、3割以上がUbuntuであるというW3Techsの報告もあるほどです。
シェアの細かい数字はさておいても、今一番人気のあるディストリビューションであることは間違いないでしょう。
Ubuntuのリリースサイクル
ディストリビューション選定の上で大切なことのひとつに、リリースサイクルとサポート期間があります。
特にエンタープライズ用途で利用するのであれば、そのディストリビューションがいつリリースされ、いつまで、どの範囲がサポートされるかを、正しく把握しておかなくてはなりません。
Ubuntuは年に2回、半年ごとにリリースされると決まっています。これはUbuntuが「タイムベースリリース」を採用しているためで、よほどクリティカルなバグなどが直前に見つかりでもしない限り、スケジュール通りにリリースが行われます。
Ubuntuの具体的なリリース日は、通常、4月と10月の第三木曜日に設定されています。
バージョン番号とコードネーム
Ubuntuも当然、リリースごとにバージョン番号がつけられています。
Ubuntuのバージョンはとても単純で、リリース日の西暦下2桁と月をドットで区切って繋げたものとなっています。
例えば本記事執筆時点(2023年7月)の最新版は、2023年4月にリリースされたバージョン23.04(日本語では「にじゅうさんてんぜろよん」と読むのが一般的)です。バージョン番号を見ただけで、いつリリースされたのか(そして後述のサポート期間のルールから、いつまでサポートされるのか)が判断できるため、非常に便利です。
またUbuntuでは、リリースごとにバージョン番号とは別に、コードネームがつけられています。これは頭韻を踏んだ「形容詞+動物名」となる英単語を、アルファベット順につけるのが慣習となっています。ここ数年のリリースのコードネームを、以下の表にまとめました。
バージョン | コードネーム | 省略形 |
---|---|---|
21.10 | Impish Indri | impish |
22.04 | Jammy Jellyfish | jammy |
22.10 | Kinetic Kudu | kinetic |
23.04 | Lunar Lobster | lunar |
23.10 | Mantic Minotaur | mantic |
コードネームは省略して、形容詞部分の単語だけを使うこともよくあります。例えばパッケージリポジトリサーバーのディレクトリ名にも、この省略形の名前が使われています。
またUbuntuコミュニティでは、特定のバージョンを指す際に、バージョン番号ではなくコードネームの省略形を使うこともよくあります。
そのためUbuntuの文脈において、これらは形容詞ではなく、固有名詞となることを覚えておきましょう。例えば文章中に「lunar」という単語が出てきたら、それは「月の〜」と訳すのではなく、Ubuntu 23.04のことを指しています。これを知らないと、、英語のドキュメントを読んだ時に意味がわからず、混乱してしまうかもしれません。
少なくとも、現在自分が使用しているバージョンのコードネームは覚えておくと便利です。これは「lsb_release -c」コマンドで調べることができます。
$ lsb_release -c Codename: jammy
Ubuntuのサポート期間
Ubuntuは、リリースから9ヶ月間サポートが行われます。リリースは6ヶ月ごとですから、新しいバージョンがリリースされたら、3ヶ月以内にバージョンアップを行わなくてはならないと言うことです。
半年ごとにOSを更新するというのは、個人用途のデスクトップであっても大変です。エンタープライズ用途では、とてもではありませんが使えないでしょう。
そこでUbuntuでは2年に1度、5年間のサポートが約束された、長期サポート版をリリースしています。これをLong Term Support、通常は省略して「LTS」と呼んでいます。LTS版は通常、偶数年の4月にリリースされます。現時点の最新LTSは、2022年4月にリリースされた「Ubuntu 22.04 LTS」です。
またLTSでは、有償サブスクリプションである「Ubuntu Pro」を契約すると、追加で5年、すなわち合計で10年のセキュリティサポートを受けることが可能です。
Ubuntu Proについては、別の記事で改めて解説する予定です。
LTSとポイントリリース
前述の通り、LTSは通常でも5年のサポートがあります。これはつまり、リリースから時間が経過してからインストールされる可能性もあるということです。
リリースから時間が経過すると、セキュリティアップデートも沢山溜まってきます。そこでUbuntuのLTSでは、リリース後数ヶ月を目安に、それまでのアップデートを適用した、新しいインストールメディアをリリースしています。
これを「ポイントリリース」と呼び、バージョン番号の最後に「.1」「.2」と、ポイントリリース番号が付加されます。ポイントリリースもおおよそ半年ごとに新しいバージョンがリリースされ、2023年7月時点で、最新のLTSのポイントリリースは「22.04.2」です。
ポイントリリースは原則的に、「既存のアップデートをすべて適用したインストールメディア」です。そのため既に運用中のUbuntuを、新たにインストールし直す必要はありません。日常的なパッケージのアップデートを行っていれば、そのUbuntuはポイントリリースとほぼ同じ状態となっています。
まとめ
簡単にまとめましょう。
- Ubuntuは決まって半年ごとにリリースされる
- 通常のサポート期間は9ヶ月
- 一般的な運用であれば、2年に1度リリースされるLTS版を使おう
- ポイントリリースがあるならば、最新のポイントリリースからインストールしておけば安心
次回はUbuntuのパッケージ管理と、サポート範囲について解説します。