こんにちは。 ニフクラエンジニアミートアップ事務局の鮫島です。
2023年12月19日(水)に第67回ニフクラエンジニアミートアップを開催しました。 今回のテーマは「冴えてる!インフラエンジニアの育て方 2023年版」です。
登壇者の佐野裕さんですが、「インフラエンジニアの教科書」という、インフラエンジニアのバイブル的な書籍の著書です。同著の大幅改版記念ということで今回で三回目の登壇になります。
冴えてるインフラエンジニアの育て方
さっそく、佐野さんのセッションですが、冒頭でちょっとしたつぶやき風の問題提起?がありました。
クラウドエンジニアもインフラエンジニアなのか?
補足すると「クラウドはインフラを作っているというよりはサービスを利用している」感じがするとのこと。
確かに、クラウドを「当たり前のように」利用している人と、サーバールームで物理のサーバーやネットワーク機器の設定を行ったり配線を行ってきた人の感覚とは大きな隔たりがありそうです。
冴えてるインフラエンジニアの育て方
ここからが本題です。 インフラエンジニアの人材育成をするにあたって、「技術力」って何か?という定義が必要ですが、佐野さんはこのように考えているとのこと。
技術=知識と経験
知識と経験を蓄積するためには何を学べばいいか?
一番いい教材は自宅サーバー
さらには「自宅サーバーは楽しい」という「逸般の誤家庭」勢が大喜びしそうな発言まで飛び出したわけですが、どういうことかというと
インフラを作ってる感覚が実体験として得られる、作って壊しての繰り返しで知識と経験量が増えるが、クラウドだと同じ事をやろうとすると課金がコワい…ということのようでした。
クラウド時代のインフラエンジニアの学習
若手のインフラエンジニアがどれくらいの割合で自宅サーバーを持っているか?というと、間違いなく少数派だと思われます(自分の周囲で観測した限り)。
運よく、クラウドを自由に触れる「無料枠」があったとしても、何かの拍子に課金される恐れがあるためなかなか自由に「作っては壊して」が出来ない可能性は確かにあると思います。
よって、クラウドの学習機会としては下記のような機会が多いと思われます。
・書籍を読む
・認定試験を受験
・セミナーや勉強会に参加
これらは、概ね知識を得るための学習になります。 実際に手を動かす機会=経験の比率が少なくなる傾向が強いですね。
コンピューターの基礎力をつけるには?
学習環境としての自宅サーバーで得られるものは、コンピューターの基礎力ですが、 確かに、クラウドは従量課金ですので、先に「クラウドのお作法」を学習しないと痛い目に遭うことがあるし、自己流で触っていると、何処かでハマってしまったり、面白みがなく飽きやすいのかもしれません。
つまり、クラウドをサービスとしてブラックボックス状態で、PaaSや既存のデザインパターンの組み合わせだけで利用するだけでホントにいいのか?というメッセージだと感じました。
T型人材
皆さんが聞きたくて仕方がないと思われる、初心者の勉強法ですが、技術力を広げるためにT型人材(広く浅い知識を持ちつつどこかで突出した強みを持つ)に沿った2つのアプローチがおすすめとのことでした。
広く浅くのアプローチは、いわゆるフルスタックエンジニア的なスキルを求められる現代的なニーズに合っている気がしますが、独学向きだそうです。やさしい技術書をたくさん読んだり、作業日記をつけたりするのがおすすめとのこと。
一方、何処かの分野での狭く深いスペシャリストとしてのスキルをつけるためには、メンターが居た方が良いとのこと。1つのテーマを決めて深堀していき、それを定期的にブログや勉強会などに参加して外部に発信することを勧められました。
特に、外部に発信すると逆に情報がその人に集まってくることもあるそうです。
最後に、実際に佐野さんの会社で発生した障害を例に、インフラエンジニアとして、こういった障害の原因ってどうやって対処すればいいか?何が原因か?皆さんはどう思いますか?」という投げかけがありました。
特に答えはないとのことですが、インフラエンジニアとしてはこういったお題を見て「ここが原因だと思う」「これも原因になりうるぞ?」「いやいやこういうパターンもある」とか、ある意味ワクワクしながら皆でディスカッションできるようになることが、経験量の増加につながるのかも?と思いました。
まとめ
佐野さんのセッションでられたことを箇条書きにするとこういう感じになります。
・技術力=知識量x経験量
・自宅サーバーを使った学習は効果的
・クラウド時代は知識量を増やす学習が主流だが経験量も増やそう
・コンピューターの基礎力を高める必要性
佐野さんご自身も参加者に「皆さんならどうしますか?」という問いかけをされていましたが、「これをやれば絶対大丈夫」という話では無く、沢山のシチュエーションに応じた正解があるのだと思いました。
QAセッション
さきほどの、佐野さんからの問いかけに呼応して質問がたくさん集まっていました。 特に「飛び入りLT勢」の皆さんはインフラエンジニアの教育に一家言ある人ばかりなので、マイクオンで意見が飛び交う熱いセッションになりました。
本の読み方を知らない?
「本の読み方を知らないエンジニアが多いので、解説して教えている」という投稿に対し、佐野さんから「これはどうやって教えているか聞いてみたい」との反応があり、手を挙げたのが飛び入りLT勢の一角、クロテックの小林さん。
「資格試験のために参考書を読む人は多いが、むしろ構築の解説書などをただ本を読ませるのではなく、読み方(自社の仕事として重要なポイントや設計ができるようになるためのポイントなど)を教えている」とのコメントでした。
これに対して、さらに佐々木康介さん(飛び入りLT勢)からの意見も出てきました。「本を何らかの意図があって読んでもらうなら、課題とかを出してそれに対する解答などアウトプットを出してもらうような読ませ方をするのがいいのではないか」とのコメントもありました。
自宅サーバー
Slidoに寄せられたコメントでも、自宅サーバーが学習環境としてはコスパが良いという見解は多くの人の支持を集めているようでした。
自宅サーバーは、専用サーバー機以外に、自作PCだったりミニPCもサーバー用途で利用されていることが多いですが、ネットワークに接続せずにスタンドアローンで仮想環境を構築したりするケースもあると思いますが、上級者になるといわゆるインテリジェントルーターを所有している人もぼちぼち出てきます。
そういった上級者は、家庭内の複数サーバーでネットワークを構築したり、自宅サーバーを外のネットワークから利用できるように(アクセス制御やVPN)するために、中古の業務用ルーターを購入するようです。
「自宅ネットワーク超入門」は、実際に自宅サーバー超入門の続編として開催されたものです。 blog.clouddirect.jp.fujitsu.com
飛び入りLT枠に参加してくださっていた、佐々木康介氏から「クラウドだとサーバー作った瞬間にインターネットにつながってしまうのが良くない。つながるまでもっと苦しまなきゃ」というコメントが。
クラウドのドキュメントを見ながらサーバーを立てたときに、TCP/IPとか、L2とL3の違いといった基礎的な部分を理解していないと、セキュリティ面でのリスクも高くなるという意味合いもあります。
そういった部分を、実際に物理で設定してネットワークが無事疎通したことを確認できるとイメージがしやすいし失敗も経験値に出来るというのが、物理を経験しているベテラン勢の意見だと思いました。
質問やコメントがどんどんヒートアップしたため、いったん中断して「飛び入りLT勢」のセッションに入りました。
佐々木康介さん
佐々木康介さんは、趣味が「佐野さんのおっかけ登壇」であり、佐野さんの登壇時には必ず現れる常連さんです。 今回は、主にインフラエンジニアに興味を持った学生と面接をして、仕事の楽しさどのように伝えるか?モチベーションを上げるか?といった話でした。
早い段階で、「インフラエンジニアとして活躍するイメージ」を具体的に伝えて、「俺たちの仕事は楽しい」という強いアピールをすることでモチベーションがあげられるということでした。
「学生と出会ったときにはもう始まっている超速育成術」 docs.google.com
株式会社クロテック小林さん
続いて、株式会社クロテックの小林充雄氏のLTです。
現在は、インフラエンジニアとしての仕事はクラウドの構築・管理が中心になりつつありますが、それでもまだまだ物理からクラウドへのリフト&シフト案件というのは非常に多く、クラウドだけの知識・経験では、特にネットワークへの理解が追い付かないことが多いとのこと。
物理からクラウドの移行案件では、ネットワークが判らないと設計ができないうえに、セキュリティの理解も不十分になりがちで、新人の自己学習に期待するだけでなく、会社として支援をしっかり行った上での基礎学習の重要性を強く訴える内容でした。
若手インフラエンジニアの課題と教育(クラウド全盛期の時代にインフラエンジニアをどのように育てるか?)
www.slideshare.net三浦杏之介さん(佐々木康介さんの後輩)
明日AWSの試験(SAA)を受験するという、入社2年目のエンジニアである三浦杏之介さんのLTです。
「冴えてるインフラエンジニアになりたい2年目」
新人インフラエンジニアの立場で、こんなふうに教育されたいなという、他の皆さんと逆の視点での話をしてくださいました。
20世紀からIT業界にいる人間からすると、何とも言えない気持ちになる名言が飛び出しました。
オンプレ時代を生きた偉人
「新人類」キタ――(゚∀゚)――!!(←既に旧人類しか使わない絵文字)」
「まず、物理を触ってみろ!話はそれからだ」ではなく、「クラウド学習環境でも基礎を学べる方法があるのではないか?」という、クラウドネイティブ世代のアプローチを提示してくれたのではないかと思います。幸い、歴史の教科書と異なり「サーバールーム」も現存しますし、「歴史上の偉人」も生存しているわけで、答え合わせもできるということですね。
あとは、特にAWSだと試験の観点がベストプラクティスに沿っていますか?コスト最適化が考慮されていますか?といったものになっているそうですが、そういうベンダー試験勉強も踏まえた学習方法として提示されたのが、一度も実際にシステム構築をしたことが無い人の演習として実際にアーキテクチャの絵をかいてみるというものです。
業務としてシステム構築をすることが無い私のような立場でも、顧客の事例を基に構成図を書き起こして答え合わせをすることがありますが、スキルが向上した気分になります。
若手の育成は将来への投資であり、組織にとって教えてくれるベテランにとって工数かかるかもしれないが、10年後にまた3人に教えたら出来る人が増えていくと考えて欲しいという理想を語ってエンディングとなりました。
最後に
ベテラン勢のお話だけでなく、入社二年目という新人の話もあって、人材不足・後継者不足といわれているインフラエンジニアの教育の現状や課題などがよく分かる内容だったと思います。
今回は、動画アーカイブはありませんが、ご興味を持たれた方はぜひ佐野さんの著書を手に取ってみてはいかがでしょうか?
「改訂新版 インフラエンジニアの教科書」 https://www.c-r.com/book/detail/1523
「インフラエンジニアの教科書2 スキルアップに効く技術と知識」 https://www.c-r.com/book/detail/1079
それでは次回もお楽しみに。
最後に宣伝です。
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