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SDGsを推進してサステナブルなIT業界にするためにクラウドをどのように活用するか

この記事は、ニフクラブログで2021-07-02に公開された記事を移転したものです。

こんにちは。富士通クラウドテクノロジーズの鮫島です。

とうとう65歳以下の新型コロナウィルスワクチン接種が始まりましたが、皆さんがお住まいの自治体のサーバーは元気でしょうか?

「おいお前!SDGsの話なのに何でワクチン接種の話してるんだよ!」と思われた方も多いと思います。 実は、SDGsとワクチン接種の話は、少なからず密接な関係があります。

それを説明する前に、まずはSDGsとは何か、実際のところよく知らない人も多いと思いますので、説明します。

「SDGsって要するに環境保護的な活動でしょ?」

SDGsは「脱炭素」を実現するためだけの取り組みではありません。

SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、格差や環境問題の解決をはじめとした、17のゴールとその下の169のターゲット、および232の指針)で構成されています。

日本では2016年5月に内閣府に「SDGs推進本部」が設置され、SDGs推進のための具体的施策をとりまとめた「SDGsアクションプラン2021(PDF)」が発表されるなど、国として取り組みが行われています。

SDGsロゴの使用において情報目的(SDGsを広める)なら使用許可が不要です。

SDGsの17のゴールは企業活動とも密接に関わっているものが多く、SDGsの実現には国だけでなく企業による取り組みも欠かせません。

日本政府のSDGs推進本部は平成28年12月に「SDGs 実施指針改定版(PDF)」という文書では、 企業の役割は「それぞれの企業が経営戦略の中にSDGsを据え 、個々の事業戦略に落とし込むことで 、持続的な企業成長を図っていくことが重要である」と明確に述べられています。

「2030年までに持続可能でより良い世界を目指す」

という国際社会共通の開発目標を達成するために、企業は何ができるか?

そのための取り組みは、企業規模や業種、部門などを問わず考えていくことが重要です(もちろんエンジニアの方も含まれます)。

そこで今回は、SDGsを推進するためにエンジニアは何ができるか?そしてクラウドはどのように活用できるのか?をテーマに、具体的な取り組みについて考えてみました。

SDGsの推進にクラウドをどのように活用できるか?

ちょうど10年ほど前に東日本大震災による原発事故の影響で、日本国内の原子力発電所が安全審査のため停止したことを記憶している人も多い(21世紀生まれの方ごめんなさい)と思います。節電という観点で、実際に当社も「クラウドへ集約することでのエネルギー効率の向上」というプロモーションを行っていました。

「物理サーバーからクラウドに移行していただければ脱炭素化へ貢献できますよ!」というロジックでクラウド事業者はSDGsを推進している!

・・・というのも一つの方法だと思います。
たとえば、当社をはじめとする富士通グループが運用するデータセンターでは、AIを活用した空調設備の制御システムを開発し、冷房効率を最適化することによって消費電力の削減に取り組むなど、オンプレミスでは実現できないようなエネルギー効率化を実現しているようです。

しかし、ご利用いただいているお客様に「クラウドに移行するとこれくらい炭素量を減らせますよ!」というエビデンスを数値で示すには至っておりません。

もう終了?

あきらめるのはまだ早いです・・・
出来ることから始める

ことも重要です。

冒頭で紹介した「SDGsアクションプラン2021(PDF)」によると、以下を重点事項として取り組むとの記載があります。

1. 感染症対策と次なる危機への備え
2. よりよい復興に向けたビジネスとイノベーションを通じた成長戦略
3. SDGs を原動力とした地方創生、経済と環境の好循環の創出
4. 一人ひとりの可能性の発揮と絆の強化を通じた行動の加速

1年のアクションプランにしてはテンコ盛りです。

2021年に関しては、この4つを重点的に取り組めばいいってことですね?

それでは、各項目について考えていきます。

1. 感染症対策と次なる危機への備え

この項目に関して、先ほど紹介した「SDGsアクションプラン2021(PDF)」には下記の記述があります。

感染症対応能力を強化するため、治療・ワクチン・診断の開発・製造・普及を包括的に支援し、これらへの公平なアクセスを確保する。

これは、冒頭で申し上げた「SDGsとワクチン接種」の話につながりますね。

現在、新型コロナウィルスのワクチン接種が猛スピードで進められていますが、残念なことに各地で「ワクチン接種予約システム」のサーバーが落ちたというニュースが報じられています。

自治体によって接種対象者の数も接種希望者の割合も異なるため、サイジングが難しいのはわかりますが、公平なアクセスの確保には程遠い状況です。

ここで、サーバーをクラウドにしていれば、オンデマンドでスケールアップやスケールアウトすることで対応可能な場合が多いと思いますし、適切な冗長化と負荷分散によって公平なアクセスの確保ができるかもしれません。
※クラウドでも、可用性を考慮しない構成を組むと落ちます。

クラウドで可用性を上げるためのデザインパターンもご紹介しておきます。 pfs.nifcloud.com

「持続可能」という観点では、総務省あたりが全自治体共通のクラウド基盤上で動くSaaSでワクチン接種システムを提供すれば効率的なのでしょうが、デジタル庁の活躍今後に期待しましょう。

忘れていましたが、新型コロナ解析の分散処理プロジェクト「Folding@home」にニフクラチームも参加してささやかながら貢献をしています。

2. よりよい復興に向けたビジネスとイノベーションを通じた成長戦略

ここでいう復興とは、コロナ終息後のお話しです。
デジタルトランスフォーメーションを推進し、誰もがデジタル化の恩恵を受けられる体制を整備し、ニューノーマルの定着・加速に取り組むということだそうです。

デジタルトランスフォーメーションについては、経産省のDXレポートで警鐘が鳴らされた「2025年の崖問題」以来、国を挙げた一大ブームとなっているのは言うまでもありません。

これは、話すと長くなるので「ハイブリッドクラウド」の作り方「2025年の崖」を超えるための ITロードマップ」というeBOOKをご用意しているのでお読みください。

ニューノーマルの定着・加速ですが、新型コロナウイルス感染症の影響により、生活意識や行動に変化が起きているのは間違いありません。

内閣府が令和2年12月に実施した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、

思ったよりデジタル化が進んでしまっている?

ワークライフバランスは改善している?

ワーク・ライフ・バランスの意識に変化が生じているのが顕著に分かります。

首都圏では、テレワークを前提として郊外に引っ越したり家を買う動きが加速していると言われています。

若い人ほど移住に向けた実際の行動割合が大きい…

確かに大都市圏でテレワークを前提として本社の社屋を縮小したり、サテライトオフィスを設けたりする企業は増加しています。

しかし、テレワークを実施している割合を地域で見ると、どの統計資料においても首都圏の企業とIT企業が突出しているのがわかるはずです。

誰もがデジタル化の恩恵を受けられる

という観点では、格差が生じていると言わざるを得ません。

「誰一人取り残さない」

というならば、デジタル化の恩恵を受けられるテレワークをもっと全国に普及させる必要があります。

ぜひ、無料eBOOK「テレワーク」でオフィスのITモダナイズをお読みください。

3. SDGs を原動力とした地方創生、経済と環境の好循環の創出

ITの地域格差の話がでてきたところで、首都圏から地方に目を移していきたいと思います。

前項で生じた首都圏から郊外・地方への移住や、大都市圏の企業が地方在住者をテレワークで採用するケースも増加している現状は、地方創生という観点ではいい傾向といえます。

地方創生という課題は、東京への一極集中の流れを変えることが重要です。

そもそも地方から東京や大都市圏への移住者が多いこと、少子高齢化によって人口が減少していることによって、過疎化が進むことで税収が減るとあらゆるインフラの整備が遅れることになります。

その流れは止めるには、地方への移住者が増加するのはもちろんネイティブな地方在住者が在地の状態で経済を活性化させられる環境が必要です。

まさに地方が「持続可能」な状態を創生するためには何が必要か?という視点です。

現時点でクラウド事業者ができることは、

テレワークのさらなる普及
地方経済を活性化させるためのソリューション提供
地域でのIT格差を縮めるためのクラウド移行推進

くらいしかありません。

取り急ぎ、参考になる事例をご紹介しておきます。

クラウド導入事例 株式会社JA福岡県協同情報センター「基幹システムのパブリッククラウド化」 | ニフクラ

DXのビッグウェーブは、地方の金融機関の雄といえるJAの基幹システムをクラウド化するほどの影響力を生じさせています。

4. 一人ひとりの可能性の発揮と絆の強化を通じた行動の加速

あらゆる分野における女性の参画、ダイバーシティ、バリアフリーを推進すると共に、人への投資を行い、十分なセーフティネットが提供される中で、全ての人が能力を伸ばし発揮でき、誰ひとり取り残されることなく生きがいを感じることのできる包摂的な社会を目指す。

これは、日本社会の重要課題である少子高齢化の急激な進行によるIT人材不足を解決する意味でも重要なテーマです。

企業・組織が制度面で働き方の多様性を認めるという変革も必要ですが、前項でもご紹介したテレワークが普及することによって、高いスキルを持った人材であっても能力を発揮できなかった人が、自宅で家族の介護をしながら・病気の治療をしながら・子育てをしながら活躍することが可能になります。

引用元:経産省産業政策局 SDGsとESGの社会的(Social)側面(2019年2月)

この項目に関してもう一つ、クラウド事業者として見逃せない課題があります。

日本のIT人材が「IT土方」と揶揄されるようなブラックな労働環境に置かれていることです。

本来は、IT人材・ITエンジニアとしてスキルを磨きたいと思っている人々が、適切な学習機会も与えられず、単純な労働力として消費され疲弊している現状があります。

サスティナブルな状態とは程遠いのでは?

これは、SIerだけでなくユーザー企業側にも少なからず問題がありますが、一向にDXが進まない原因の一つと言われています。

経済産業省 DX レポート 2 中間取りまとめ(PDF)によると、「ベンダー企業の事業変革」として、SIer(ベンダー企業)の役割は労働力供給から高スキル人材によるスポット的支援等にシフトしていくのではないかという希望的観測が記載されています。

協調領域に関するITシステムはパッケージソフトウェアやSaaSの利用に代替されるとともに、競争領域のITシステムについては経営の迅速さを最大限に引き出すためにユーザー企業で内製化されるようになると考えられるため、今後、大規模な受託開発は減少していくものと考えられる。こうしたユーザー企業の変化を起点として、ベンダー企業自身も変革していくことが必要である。

引用元:経済産業省 DX レポート 2 中間取りまとめ (概要)より

このような変化に対し、国内クラウド事業者としてはどのように立ち回るべきか?

外資系クラウドと価格や機能で競争するだけではなく、SIerとユーザー企業の共創の基盤としてどのような価値が提供できるか?という観点も重要になっていくのではないかと思います。

たとえば、外資系クラウドではユーザー企業の求める可用性の担保が難しい要件がある…そういったニーズにマルチクラウドで応えるような柔軟な提案力が必要になるはずです。

AWSとニフクラでマルチクラウド構成を組む方法を解説したブログ記事があります。 blog.pfs.nifcloud.com

日本では、IT人材・ITエンジニアの多くはSIerやIT業界に過重に偏っているという特殊事情もありますが、IT人材は一朝一夕には育成できません。学校教育でもIT人材を育成する取り組みが必要ですし、社会人になってからもIT技術を学習する機会をもっと増やし、底上げをはかる必要があります。

富士通クラウドテクノロジーズでは、津田塾大学、日本女子大学、富士通株式会社、アシアル株式会社、とともに産業界と連携しながら、Society 5.0を支える女性人材を育成するために 「女子大学生ICT駆動ソーシャルイノベーションコンソーシアム」を設立しました。

また、コロナ禍でリアルの学習機会が減少している、初心者・新人エンジニアをターゲットに毎月一回クラウドを中心としたIT技術を無料で全国どこからでも学べる・質問できるイベント「ニフクラ エンジニアミートアップ」も主催しています。

まとめ

最近、グローバル企業のサプライチェーン下で強制労働や低賃金労働といった人権侵害や環境破壊が行われているという問題がときおりニュースになることがあります。

IT業界のサプライチェーンにおいても、同様の可能性があります。

IT業界もサステナブルではない可能性

関連会社や子会社、取引先やその下請け企業に過重な負荷をかけながら、自社はSDGsを推進している企業です!というアピールをするのは、利己主義的であり社会全体でサステナブルな環境を作っていくというビジョンとは程遠い気がします。

最後に、「誰一人取り残さない」サステナブルな環境で、誰もが能力を発揮でき生きがいを感じることのできる包摂的な社会(IT業界)を目指すためにはどうすればいいか?

DX基盤として国産クラウドの導入・移行をご検討ください。

そして、さまざまな課題解決にお役立ていただきたいと思います。
※完全に宣伝です。

pfs.nifcloud.com